日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されたというニュースが流れてきました。
同氏指示による有価証券報告書における役員報酬の虚偽報告、社内経費の私的使用等が明るみで出ていますが、とても残念なニュースです。
リバイバルプランにて、同氏が当時瀕死の状態だった日産自動車を立て直した経営手腕が印象的ですが、経営が安定した時期から不正が確認されているようで、徐々に会社を私物化してまったということでしょうか。
今回のケースを見て、非常時と安定期の戦略をふと思いました。
社内でゴーン氏に意見を言える人がいなかったということから、同氏は典型的なカリスマ経営者のように見えます。せっかちでありつつも強い信念がありそれを推し進められる、どちらかというと、非常時/緊急時や短期決戦時に最も力を発揮するタイプの経営者ではないかと思います。このタイプは、スピード感あるトップダウンでの意思決定を下すことが得意です。リバイバルプランであれば、リストラを含む大規模なコストカットを躊躇なく推し進めていました。
一方で、その状況をひとたび乗り越えてしまえば、企業としては次の成長に向けた安定期を迎えます。このタイミングは、革新的なアイデアをどうどう形にして世に送り出すかに注力すると同時に、利害関係者を中心に世間に対する社会的責任を果たすことも求められます。
まさに「企業は社会の公器」と言われる所以です。
つまり現在置かれている会社の状況により、とりうるべき戦略や重点事項が変わってくるということになります。どんな手を使ってでも利益を出せば良しという価値観は通用しなくなってきます。
一人の経営者が、状況に応じた考えをすべて併せ持つというのは、非常に困難でしょう。そのため、役員や外部の目を活用して、自分の考え方に牽制を効かせ、最適解となる戦略を策定すべきなのですが、今回の日産のケースはその仕組みが機能していなかったことになります。
自社が大きくなればなるほど、社会に対する責任を念頭に置き成長を考えなければ、結果として今まで築いてきた関係先(社員、取引先、株主)に多大なる損害を与えてしまうという典型的なケースだと思います。